異国の地、ベトナムに伝わる楽器、トルンを日本で演奏するひとりの女性がいます。演奏がはじまると、その小さな体からは想像ができぬほど、大きく、勇壮に音を奏でます。彼女が軸となって結成されるトリオは、ジャズの感触に覆われたアンサンブルを奏で、潤いのあるグルーヴを響かせます。その音は、想像してしまいがちな「伝統」とは違い、現代的であり、未来的ですらある。音楽を聴いていると、この人たちは、一体、どんなところを目指して楽隊の旅を続けているのか、気になってくる。彼らが音楽にのせ、運んでいる想いを、小栗久美子さん、岡山晃久さん、菊田茂伸さんの3人に聞いてみました。
初夏のある日のこと、大澤寛くんという知人からお中元をいただいた後、一本の電話が入ってきました。大澤くんは、プログラマーをしながら割と都会的なお洒落ライフを楽しむパパです。生まれも育ちも東東京、いわば下町っ子です。
「この間、石鹸送ったんだけど、どうだった?」
「ああ、あの牛乳パックみたいなやつね、いやぁ使い心地最高だね。”ありがと
う”いい忘れてたよ、もらった電話で何だけど、”どうもありがとっ”」
「何だよ、そのやる気のない”ありがと”はっ! まあ、いいけどさ。いやさ、
この会社、君、取材したりしてみない?」
「えっ、取材? したいしたい。一体、どこにある会社なの? なにっ、墨田区、ああ、下町の墨田
、東東京だね。へぇー、そんな石鹸会社があるんだ。それはいいね。よし、ぜひ取材
しよう!」
そんな話の流れにのって、取材をさせていただくことになったのが、今回の下
町にある石鹸会社さんだったのでした。
鷺沼という土地には月見堂という不思議な夫婦が営むお店があります。今回、ここに注目したのは、この夫婦が2009年の5月16日に行った即興演奏のライブがあまりにも美しく、神々しく、素晴らしかったからです。彼らが一体何者であるのかは、ひと言ではなかなか言い表せません。「前衛音楽家」という単語を使うこともできるし、「ショップオーナー」というわかりやすい単語を使うこともできます。明らかに普通の人とは違った表情を浮かべる彼らは、めったに出会えない生き方をしている人たちのようです。
鉄割アルバトロスケットという舞台芸人の集団があります。鉄割の舞台は、4コマ漫画をロックな演劇にしたような、彼らからは、そんな印象を受けます。何も断定しないし、何も押し付けてこない。オチがあるようなないような、短い演目が淡々と舞台の上で繰り広げられていく。お客さんたちが笑うポイントは、まったく一致していない。それぞれ各自がみんなバラバラなポイントで笑う。コメディではあるのだが、お笑いでは決してない。1997年の旗揚げから12年の歳月を経て、いよいよ脚光が集まる鉄割から、脚本の戌井さん、演出のみさをさん、役者の村上さんにお話をおうかがいしました。
鎌倉にある湘南モノレール・片瀬山駅にひっそりと佇む器のギャラリーがあります。そのお店の名前は「うつわ祥見」。鎌倉ならではの閑静な住宅街に潜り込むと、その看板は出ています。そして、看板の先には高台の上に感じの良い建物が立っている。そう、ここが「うつわ祥見」です。どういうわけか、このギャラリーでは、平日の昼間から、お客さんが引きも切らずにやってきます。このご時世、決して便の良い場所ではないのに、お客さんが集まってくる。そんな不思議な空間を切り盛りする人物は、ライター兼エディターでありながら、音楽のコーディネートのお仕事もこなすなど、多岐にわたって精力的に活動されている、祥見知生さんです。この人物には、不思議なことに、ご自分のビジョンを次々と現実のものにする力が備わっているようです。その秘密を、お茶飲みがてらにお邪魔して、探ってきました。
鹿児島と言えば、焼酎です。そして、その焼酎を注ぐ道具と言えば、黒千代香です。せっかく鹿児島に来たならば、鹿児島のシンボル的な道具をつくっている現場を訪ねてみようと、長太郎焼と呼ばれる窯を探し当てました。モノ自体にいかにも鹿児島らしい男らしさが漂っている点が目をひきます。ところが、この長太郎焼、いくつもの長太郎焼窯が存在しているようなのです。これって一体? と思いつつ、思い切ってそのうちのひとつの窯を訪ねてみることにしました。
素敵な使い心地の櫛。そんな櫛を求める声は、女性たちの間では、あたり前のようにある声でしょう。しかし、現在、巷にあふれるのは、そのほとんどがプラスチック製のもの。人工物だから悪いものだとは言わないまでも、もっと他にもあるはず!そう思う乙女たちは決して少なくないでしょう。そして、現代においては、男性諸子だって、良い櫛を使いたいものです。何故なら、それは、良い櫛は何となく頭皮にも良さそうですから…。つまり、ハゲ予防!そこで、ふと思い浮かべたのが、老いて尚、綺麗な髪の祖母が使っていたあの櫛です。「ツゲ櫛」。祖母の口をついて出てきたのは、たしかに、そんな単語でした。そんな覚束ない記憶を頼りに訪ねてのは、鹿児島県は薩摩半島の南端に位置する指宿にあるつげ櫛屋さん、喜多製作所です。
鹿児島県にある桜島は、鹿児島に住む人々にとっては心のシンボルとも言える風景なのでしょう。半島である桜島にそび立つのは、御岳と呼ばれる活火山。この火山が、現在も小規模な噴火を繰り返しています。桜島焼は、桜島の火山灰と温泉水を使ってつくる焼き物です。桜島ならではの素材を用いた陶器。ここには、この土地の心が映されているのでしょうか、見る人に自然の豊かさと原始的な荒々しさを印象づけます。この桜島焼きをつくるのは、桜島の麓に店を構える桜岳陶芸。この窯元、伝統から数代と続く窯元ではありません。なんと、この窯元、ある男の人が一代で築き上げたという一風変わった窯元なのです。
愛媛県内子町五十崎、とある取材の空き時間、ふと不思議な噂を耳にしました。 「この土地には不思議な仙人のような人がいるんです。あの人、口では何も言わずとも、人を動かす不思議な力がある人なんですよ。いやぁ、不思議だ、不思議だ」。 一体、何のことだろう? 甘いお金のささやきでも、鉄拳制裁でも、飴と鞭でもないというのなら、どうして人が人を動かすことなどできるのだろう?そんな不埒千万を思うのは、筆者だけなのでありましょうか。しかし、この地域の人たちは、その話に首頷するばかり。 「わかる、わかる。あの人には黒魔術的な何かがあるよ」。 な、なんと、黒魔術。 そ、そんなマジカルな方ならば、是非ともお会いしてみたい。 こうして、お会いすることになった人物は、亀岡酒造の会長を務める人物、亀岡徹さんでした。
近代的絃楽器と伝統的絃楽器。そのコントラストを楽しみたいと、先週に続き訪ねたのは、「三味線かとう」です。同店があるのは、路面電車が往来する東京の下町、荒川区。淡い懐かしさ漂うこの界隈に、チトシャンベンベケとあの三味線の音が響きます。でも、その音、実はフツウの三味線の音とはちょっと違う。何と、その音には電気が通っているのです。エレキ三味線? うーん、何やら色物的な響きですねー。ところがどっこい、同店には、蒼々たるプロの三味線プレイヤーたちが顧客として名を連ねる。さあ、一体どうしてでしょう?