マガジン

白昼夢をつくる、鉄割アルバトロスケット

2009年6月9日 0 コメント

鉄割アルバトロスケットという舞台芸人の集団があります。鉄割の舞台は、4コマ漫画をロックな演劇にしたような、彼らからは、そんな印象を受けます。何も断定しないし、何も押し付けてこない。オチがあるようなないような、短い演目が淡々と舞台の上で繰り広げられていく。お客さんたちが笑うポイントは、まったく一致していない。それぞれ各自がみんなバラバラなポイントで笑う。コメディではあるのだが、お笑いでは決してない。1997年の旗揚げから12年の歳月を経て、いよいよ脚光が集まる鉄割から、脚本の戌井さん、演出のみさをさん、役者の村上さんにお話をおうかがいしました。

訪ねた人:戌井昭人、牛嶋みさを、村上陽一
場所:千歳烏山・いざかや百萬石、リトルモア地下
取材:鈴木 "スズ" 隆文

tetsuwari14

どうもこんにちは。いつも楽しませてもらっています。実は鉄割のあらましについては、ウェブ・ダイスの方でほとんど読んでしまっていて、知っているんですよ。元々は、文学座にいた戌井さんとその仲間で結成されたという感じでいいんですか?

戌井 :ああ、そうでしたか。でも、実際には、ここにいる牛嶋みさをさんと玉川学園にいた頃にはじめたものなんです。大学生って、口だけで偉そうな夢を語る奴っているじゃないですか? まさに僕がそういう奴だったんですよ(笑)。それで、「俺は将来、脚本書いて、有名になって」みたいなことを触れ回っていたら、みさをさんが「じゃあ、一緒にやろうよ。やっちゃおうよ」と言い出してくれて、とりあえず大学時代に一回やってみたんですね。でも、それはそれで一回だけでした。

(牛嶋)みさを:それを僕はずっと続けていたんですね。

戌井:でも、僕は卒業後に文学座に入って、演出のこととか勉強しようと思っていたんですけど、やりたいこともできなくて、文学座をやめて、みさをさんと一緒に何かやれないかなと思って、それで出来たのが鉄割なんです。そこからですね、いろいろ出会った人たちを吸収していってドンドンと膨らんでいったのは。

村上:僕はバックドロップスというバンドをやっていて、それで一緒にやらせてもらったりして、最初は、「何か気持ちの悪い人たちだね。何か不安だね」みたいな感じで、恐る恐る近づいた感じだったんですけど、今は一緒にやっていますね。

みさを:今、鉄割で一番、気持ち悪いメンバーのひとりとして挙げられているのが、村上くんなんだけどね(笑)。

tetsuwari01

tetsuwari04

でも、鉄割みたいなパフォーマンスの集団は、一体、どんな風にしたら、形づくられていくのか不思議で仕方ないのですが、それはどうしてなんですか? 最初に、何か青写真のようなものがあったんでしょうか?

戌井:元々、演劇をやっていた人たちだったから、その演劇というものを「ばらさなきゃ」みたいなことは思っていました。でも、その前に演劇というもの自体、数えるほどしか観たことがないから、あんまりよく分かっていなかったと思います。他は何だろ?あ、だから、フランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インベンション(1966年に結成されたフランク・ザッパ率いるバンド)みたいになりたいというのはありました。

tetsuwari39

tetsuwari27

鉄割というものを、どんな団体かと説明するのは、非常に難しいですよね。

戌井:一度、英会話のクラスで、自分のやっていることをどうプレゼンするかというのに参加したことがあって、そのとき先生にいろいろ説明したら、それは「マージナル・パフォーマンス(マージナル=狭間の、境界の、辺境のという意味)」なんじゃない?と言われたことがありましたね。僕らがやっているのは、フォークロアな、昔の田舎の、伝統芸能みたいなものに影響を受けてやっているところがあります。例えば、アフリカの民族音楽だったり、アメリカのブルースだったり、日本だったら猿回しとか、相撲、歌舞伎、文楽、お神楽とか、そういう民衆の放浪芸を真似ているところがあるような気がしますね。

みさを:鉄割という名前も、そこから取ってるしね。その昔、鉄割熊造という人が率いていた鉄割一家という足芸人たちがいたんですよ。足で盥をまわしたりする。

戌井:江戸時代頃のサーカスみたいなものだったと思うんですけど、彼らはアメリカに渡って、足芸で食べていた芸人たちだった。そういうことが小沢昭一(劇団しゃぼん玉を主宰していた俳優、エッセイスト、芸能研究者)さんの本に書かれていて、それでその音の響きが気に入って鉄割という名前を付けた。アルバトロスは阿呆鳥という意味で、フリート・ウッドマックPILというバンドの好きな曲からつけたものです。

なるほど。そうだったんですね。

戌井:実は、嘘みたいな話があって、鉄割のURLというのは「tetsuwari.com」というものなんですけど、これにアメリカ在住の日本人から問合せが来たんです。「どうして、あんたらは、鉄割と名乗っているんだ?」と。それで、「これこれこういうわけで、鉄割なんです」と返信したら、「鉄割熊造は、私のひいじいちゃんだ」と返事が来たことがあった。昔はエドサリバンショーなんかにも出たことがあったみたいですよ。

tetsuwari21

tetsuwari31

それは凄いエピソードですねー。ところで、鉄割という得たいの知れない集団が、これからどこに行こうとしているのかも、とても気になりますね。

戌井:特に目標もなく続けてきてしまっているから困ったものなんです。それなのに続けられているのは凄いのかね?

みさを:続けたいとも思っていないけど、熱い約束を交わしたわけでもないし(笑)。戌井の目標はもてたいとかでしょ?

戌井:そうですね。というか、出会いたい(笑)。まあ、単純に言ってしまえば、中学生がバンド組むみたいな感じなんです。だから、要するに友達なんですよ。だから鉄割に役者としての志を持って「入りたい!」って言われても困ってしまうんです。

村上:そこに山があるから登るみたいな、ね。

戌井:だから、僕はすごく鉄割という存在には救われているんだと思いますね。趣味が鉄割だと言ってもいいくらいですからね。僕から鉄割を取ったら、読書とか映画とか、そんな普通の趣味しかないですから。だから、僕は主宰ということになっていて、脚本も書くんだけど、それは時計台の電池交換係みたいなもので、電池を交換したら「時計台の下に集合!」って言う係で、そうすればみんな友達が集まってきて、時計台の下で時間が動き出す、そんな感じだと思うんです。

みさを:何、その文学的な表現(笑)。俺たちが時間に囚われているみたいになっているけど大丈夫?

戌井:じゃあ、狂った時計台の下に集合!?

tetsuwari23

tetsuwari33

tetsuwari22

その友達とか、仲間という話であれば、鉄割はとても個性派揃いという感じですよね。そういう人たちが友達というのは凄いですね。

みさを:あえて、そういう奴を集めたわけじゃないくて、何となく集まったという感じなんですけどね。でも、違うものを持っているから好きというのはあるかもしれない。同じ映画を観ているからではなくて、違う映画を観ているから友達みたいな感じかなぁ。

村上:僕なんかは途中から参加させてもらうようになったから、凄く思うのは、「この人たち、気持ち悪い」っていう想いが仲良くなったあとは、「あ、割と普通なんだ」ということがわかったことですね。だから、最初やるときとか、「放火魔がいるらしい」「人殺しがいるらしい」とか聞いていたから、危険な人たちで、きっと会話もまともにできないような人たちに違いないと思い込んでいたんです。でも、一緒に練習したら、意外と普通だったから、凄い安堵したのは覚えていますね。

戌井:そんなの僕らだって、最初に村上くんを観たときは恐かったよ。なんだ、こいつはってさ(笑)。

tetsuwari05

tetsuwari26

tetsuwari30

でも、鉄割の人たちが「普通」である程度の常識をお持ちなのは、すごくよくわかる気がします。今回のインタビューでもそう感じますから。そういう意味からすると、いわゆる奇人変人の会的な見方をされがちな鉄割のイメージとは、ギャップがありますよね。

村上:あと、鉄割は努力してないと思われてたりもするかもしれないけど、実はそうじゃないんですよ。鉄割って万人に対して「これ、面白いでしょ!」って言えるわけでもなく、「わからない奴はバカだ」って言えるわけでもない。要するにコアな部分がないから、やっていて凄い恐いんですよ。だから、そこに対しては努力をしていると思います。

戌井:そうですね。努力はしているよね。演出では、「村上くん、そこでぴーぴーぱーぱー」みたいなことしか言わなくても、台本書く作業だって、すごく詰めて真剣にはやっていますからね。「まったり」とか「ゆるく」とか、そういう感じではやっていないですね。

みさを:僕は、あんまり努力してるとかはないな。でも、自分が既に面白いとわかっているもの以外を観たいというのはあるから、それを出すための努力というか、意地悪はするかな(笑)。村上くんの魅力が出るには、どうやったらでるかなぁみたいな。演技なのか地なのか、はかりかねるようなのが面白いですよね。そういう演出の努力はしたいと思っていますね。

戌井:ああ、役者さんに自信持って「面白いだろ!」ってやられると嫌だよね。台本書いた僕だって、何が面白いのかわかっていないときがほとんどなのにさ、なんでそんなに自信満々なんだよ!って(笑)。

tetsuwari321

tetsuwari11

なるほど。でも、鉄割というのは、面白いですね。一体なんなんでしょうね?

村上:僕、寝るときどうやって人が睡眠状態に入っていくかを真剣に考えたことがあるんですけど、つまりそういうことなんじゃないかなって思うんですよ。寝るときって、言語じゃない言語、「てにをは」も文法も、論理も何もない言葉が連なっていって眠りに至るんですよ。その頭がポワーッてしてくる感覚に鉄割の舞台って近いと思うんです。短い演目を観ていると、そんな風に段々、頭がポワーッてしてくる。つまり、鉄割って、そういうような白昼夢を観ているような、そんな舞台をやる集団なんだと思います。

tetsuwari17

お知らせ!!

鉄割の2009年の予定
9月11日ー9月13日/
吾妻橋ダンスクロッシング
9月26日/
那須高原でのイベントに参加。
11月12日—11月17日/
スズナリ劇場で本公演
『鉄割のアルバトロスげ』

詳細などは下記、urlへ。
http://www.tetsuwari.com/webapp/top/index.html

コメント